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イベントレポート|「美意識と文化」#02 イタリアパン職人が紡ぐ美意識と手仕事の文化
2024年12月1日に開催した、Beer&CafeEngiとco-en共催のイベント「美意識と文化」。第2回目となる今回は「イタリアパン職人が紡ぐ美意識と手仕事の文化」をテーマに、ゲストには茨城県石岡で薪窯を使ってイタリアパンを焼く「フォルノ・ア・レーニャ パネッツァ」の角谷總さんを迎え、パン作りの本質を通じて、手仕事に秘められた「美」の意味にふれていきます。
便利さを追求する現代社会の中で、自然との調和や本質への回帰を求める姿勢が、パン作りという芸術的な営みを通じて描かれました。
右から、角谷 總さん(Forno a legna Panezza)と松島 壮志さん(Beer&CafeEngiオーナー)
イタリアでの出会いと起点
当初、角谷さんのパン作りの旅は、意外にも「パン職人になろう」と決めて始まったものではなかったとのこと。1999年にイタリアへ渡り、約4年半滞在。その目的は、好きな文化であるイタリアを知り、自分にとって「やりたいこと」を見つけるためでした。
イタリア滞在中、フィレンツェでスパゲッティやパスタ料理の技術を習得。その後、ナポリへ移り、本場のナポリピッツァ作りに衝撃を受けます。30軒以上の店に直談判を繰り返し、念願叶って現地で修行。ここから「自分がやりたいもの」に近づいていきました。
ナポリでの経験を経て、次に挑戦したのがローマの「パリパリとした食感」のピッツァ。この新しいスタイルに取り組むことで、ピッツァの多様性を理解しようとしたそうです。「ひとつの方向性だけでは全体像は見えない」と語る角谷さんは、異なるスタイルを学ぶことで理解を深める姿勢を大切にしていました。
さらに、ピッツァのルーツが「パン」であることに気づき、パン作りの本質に迫るため、ローマ郊外のパン作りの歴史が深い地域で修行を開始。ここで角谷さんの「パン」に対する情熱が本格的に芽生えたと言います。
つくばの文化と共に親しまれるパン作りを
イタリアから帰国後、日本で自分が何を作りたいかを改めて考え、「パン」に決めた角谷さん。つくばに店舗を構えた際も、「ただのパン屋」ではなく、イタリアで学んだ技術や文化を活かしながら、ここで根付いていくパンを提供することを目指しました。
「パンは素材の選び方や製法で無限の可能性を秘めており、それが毎日の生活に密接に関わっているところが魅力」と語る彼が選んだのは、つくばの土地でした。築100年の古民家を改装した店舗は、地域の雰囲気を活かしつつ、パン屋兼カフェとして開かれています。店内にいる猫たちもお店の一員として親しまれています。
つくばの魅力について、角谷さんは「自然と都市が共存し、多様な価値観が交わる場所」と表現します。地域住民にとっては親しみやすいコミュニティ、そして学生や研究者といった外部の人々にとっては新しい発見を得られる場になるようなお店を作りたい。つくばだからこそ実現できるパン作りは、角谷さんにとって探究と挑戦を続ける場としてとても魅力的な場所となっているのだと感じます。
おわりに
その地域で生産される素材や季節感、フランスやイタリアの伝統的な製法を取り入れたレシピを組み合わせながら、唯一無二のパンを表現することを目指す角谷さん。つくばにおける薪窯を使ったパン作りは、手間のかかる技法でありながら、角谷さんは手作りと本質にこだわる姿勢を大切にしています。
単なるパンの販売の場としてではなく「食べ物が持つストーリーを共有する場所」としても展開されるお店は、地域と伝統をつなぐ架け橋として展開を続けながら、そこで生み出される手仕事と本質にこだわるパンは、未来へ受け継がれながらその土地の文化となっていくのではないでしょうか。