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イベントレポート|「美意識と文化」#01 街と文化を紡ぐ美意識

2024年9月27日に実施した、Beer&CafeEngiとco-en共催のイベント「美意識と文化」。第1回目となる今回は「街と文化を紡ぐ美意識」をテーマに、ゲストにはデザイン理論や感性デザインを研究されている五十嵐浩也氏を迎え、文化と美意識の関係性を紐解きながら、つくば市における文化的な街の成り立ちの考察や、これから求められる美意識について探っていきました。

イベントの目的は、「対話」を軸に、過去と現在、そして未来をつなぐ文化と美意識の役割について探っていくこと。毎回様々な業界で活躍するアーティストをゲストに迎え、それぞれが生み出すもの (美) に対する意識と本質について語り合います。

当日は、美の概念を多角的に探るべく、デザインや町づくり、文化の観点からその本質に迫りながら、文化の継承と変革を通じて、未来の美がどのように形成されるのか、そして私たちがその美をどのように感じ取り、共有していくべきかを深掘りしていきました。

美の定義:文化による違いと普遍性

イベント冒頭、まず美という概念が文化によって異なる形で捉えられている点が議論されました。五十嵐氏は、中国語の「美」がもともと「大きな羊」に由来することを紹介し、美の基準は地域や時代、文化的背景に依存することを指摘します。

遊牧民族にとって価値の高い羊が「美」の象徴とされるように、各文化が何を美しいと感じるかは、それぞれの生活や価値観によって大きく異なり、また、英語の「ビューティー」や「エステティック」という言葉が日本語の「美」とどう関わるかについても触れられ、言語や文化によって美の概念が多様であることが強調されました。

五十嵐 浩也氏(筑波大学 特命教授、つくばデザイン株式会社CEO)

デザインと美の関係性

次に、美の概念がデザインにどのように反映されるかが議論されました。五十嵐氏は、デザインの基本には「型(様式)」が存在し、その型に基づいて形が生まれると説明します。そして、その型の背後には「か(概念)」というさらに抽象的なものがあり、デザインは単に形を作るだけでなく、抽象的な美を表現する手段でもあると述べます。

日本におけるデザインの歴史や、デザイン思想が現代の美に与えた影響についても言及し、デザインにおける美は単なる見た目の美しさに留まらず、価値や意義を内包するものであることが強調されました。

美とまちづくり:日常の中での美の役割

次に、美の概念はまちづくりにも重要な役割を果たすという視点が示されました。五十嵐氏は、街が美しいと感じられるためには、単に美しい建物や風景を増やすだけでなく、住民が美を感じ取る機会や文脈を提供することが必要であると述べます。美は感覚的なものであり、それを感じられる状況や体験がなければ、単なる経済活動に埋没してしまう危険性があると指摘します。

街が豊かで文化的に成熟するためには、美を感じ取る機会を増やし、その価値を共有することが重要です。

美の未来と文化の継承

最後に、美の概念がどのように継承されるのかについて議論が行われました。伝統や文化を継承するという行為は、単に過去のものを模倣することではなく、過去の価値観を理解しつつも新しい美の形を模索することだと五十嵐氏は主張します。

特に、芸術やデザインにおいては、美しいものを作ることだけでなく、時には破壊や変革が必要であり、それをどのように次世代に伝えていくかが重要な課題であると指摘されました。また、美意識は個々人の価値観に依存する部分が大きく、それが町や社会全体の文化的な豊かさに繋がるとしています。

最後に

イベントを通じて、「美」という概念が非常に多様であり、文化や価値観によって異なる形で捉えられていることが明らかになり、また同時に、美は単なる視覚的な美しさにとどまらず、デザインや町づくり、そして文化の継承と深く結びついていることが示されました。

美の追求は、個人や社会にとって重要なテーマであり、それを理解し、共有することで、より豊かな文化的生活を築いていくことができるのです。
次回の開催もお楽しみに!